
今日は、短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリー、それぞれの関係と記憶の仕組みについて説明します。
このブログでは、意志力など脳の能力について解説していることが多いので、その脳の能力であるワーキングメモリーや、関連する記憶の仕組みは知っておいた方がわかりやすいと思います。
あくまで短期記憶と長期記憶とワーキングメモリーの概要と、その関係性についての説明にしぼっています。
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリーとは?
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリー、ひとつずつ説明していきますね。
短期記憶とは?
「短期記憶」とは、言葉のとおり短期的に覚えている記憶のことです。
短期的とは、ケースバイケースですが、数分~数日間くらいのことです。
それを過ぎると忘れてしまうような記憶のことを、短期記憶と言います。
たとえば奥さんから、
と、お使いを頼まれたとします。
その日お使いが済むまでは、何を買うか覚えているでしょうが、1日〜数日経つとおそらく忘れてしまうと思います。
こういった一時的にしか覚えていられない記憶が短期記憶にあたります。
また、覚えている難易度が高いものは、さらに記憶している時間も短くなります。
たとえば、日本の国土の面積は「37万8000㎡」なのですが、よっぽど意識して覚えようとしないと、こういった記憶は数分で忘れてしまうと思います。
長期記憶とは?
「長期記憶」とは、長期的に覚えている記憶のことです。
たとえば、自分の両親の名前や誕生日などは、皆さんいちいち聞かなくても覚えていますよね?
また、
などの問題に対する答えも、皆さんちゃんと頭の中に入っていると思います。
(それぞれ、「徳川家康」、「東京」、「365日」、「緑色と銀色」ですね)
これらの情報は、改めて覚えようとしなくても、もう脳の中でしっかり定着していると思います。
こういったものが長期記憶にあたります。
なお、ある情報を長期記憶にするためには、短期記憶にあった情報を繰り返し頭の中で反復する必要があります。
短期記憶であった情報でも、繰り返し頭の中で覚えることで、長期記憶に移行します。
学校の勉強などの情報は、まさにこの長期記憶にあたります。
あなたも、数学の公式や英単語や英文法、歴史、地理などの勉強で、様々なことを覚えていると思います。
など、あなたもまだ覚えているんじゃないでしょうか?
これらも、一番最初に学んだときは、「短期記憶」として覚えたものだと思います。
しかし、授業などの勉強で何度も繰り返し学んだことで、「長期記憶」になったと考えられます。
だから何年も経った今でも、脳の中に入ってるわけです。
ワーキングメモリーとは?
「ワーキングメモリー」は、最近よく聞く単語ですね。
このワーキングメモリーは、「一時的な作業を行う能力」のことを指します。
「メモリー」とついていますし、日本語でも「作業記憶」と訳されることがあるので、記憶の一種と思っている方もいると思います。
しかし、ちょっと勘違いしやすいんですが、厳密には記憶ではなく、能力のことを指すので間違えないようにしてください。
ワーキングメモリーは記憶ではないので、何かう考えたり、計算をしたり、そういった作業も行います。
たとえば、
などと考えたりするのも、ワーキングメモリーを使います。
もちろん、何か覚えようとしたりするときもワーキングメモリーを使います。
短期記憶と長期記憶とワーキングメモリーの関係性は?
これまで説明したとおり、短期記憶と長期記憶は記憶の種類になります。
そして、ワーキングメモリーは処理をする能力になります。
要するに、それぞれ別物なんですが、どういった関係性があるのか具体例を挙げて説明します。
たとえば、
と言われた場合。
ほとんどの方は、三角形の面積を求める公式「三角形の面積=底辺×高さ÷2」を使い、下記のように面積を算出すると思います。
このとき、
- 「底辺4cm、高さ3cmの三角形」
- 「『三角形の面積を求めよ』という指示」
という情報は一時的な記憶で、そのときしか覚えていませんので「短期記憶」にあたります。
一方、
- 「『底辺×高さ÷2』という三角形の面積を求める公式」
という情報は、小学校の時に習ってずっと覚えている記憶ですので、「長期記憶」にあたります。
そしてこれらの情報を、それぞれ短期記憶・長期記憶から呼び戻して計算を行う能力が、「ワーキングメモリー」にあたるわけです。
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリーの関係はこのような形になっています。
つまり、短期記憶を利用するときも、長期記憶を利用するときも、ワーキングメモリーを使って行なっているわけです。
ワーキングメモリーが働かなければ、短期記憶も長期記憶もただの情報であって、何も活用ができません。
記憶のメカニズム
人が物事を記憶するメカニズムについても、簡単に説明をしておきます。
まず人間は、「感覚記憶」を使って外部からの情報を知覚します。
感覚記憶とは、触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚といった五感で感じられた情報のことです。
その感覚記憶を脳で受け取るときに、「短期記憶」となります。
そして、短期記憶の情報は、一定期間経つと忘れてしまいます。
しかし、何回も繰り返しその情報を反復すると、「長期記憶」に移行していきます。
これがざっくりとした記憶のメカニズムです。
たとえばですが、子供が火に触れたとします。
このとき子供は、目や匂い、そして触れた感覚で火がどんなものか知覚します。
これが感覚記憶です。
そして、「火はオレンジ色で、焦げ臭くて、触れると熱い」ということが、脳の短期記憶で保存されます。
しかし、これが1回だけで、その後いっさい火を見る機会がなければ、その情報もいつしかなくなってしまいます。
でも、その後も火を見る機会があれば、そのつど火の情報が脳の中で反復されますので、少しずつ長期記憶に移行していきます。
このようにして、人間は物事を覚えたりしているわけです。
まとめ
- 「短期記憶」は、短期的に覚えている記憶のこと
- 「長期記憶」は、長期的に覚えている記憶のこと
- 「ワーキングメモリー」は、一時的な作業を行う能力のこと